人が行くところ時計も行く
20世紀というマシンエイジの始まりのところにいた時計は、水どころかホコリさえ大の苦手にしていた。それを腕に巻く必要があった。ホコリ、湿気を遮断できる時計ケース。振動に耐え、姿勢差をものともしない機械。腕に精細な機械を巻く目的に適った時計ケースと機械がつくれるようになって、腕時計の行動範囲は一挙に広がった。そこからほぼ1世紀。100年という時間を経るなかで、一度は異形の形をとった腕時計は今、町の時計店のショーケースから、直接、深海底へ入っていける。飛べと求められたら、そのまま月へも、宇宙へも飛んでいける。
※『デザインがわかる』(ワールドフォトプレス刊)で連載されたシリーズを一冊にまとめると同時に、腕時計のデザインを串刺しする「視認性を構築するデザイン」を収録しました。